プラスチックの機械的性質

plastics 「プラスティコス」:可塑性があるという意味…成長する.形作る.発達する.

外力のかかり方と時間的な条件は、

@     一定速度でゆっくりの場合:普通の引張、圧縮、せん断、曲げ、ねじり、硬さなど

A     衝撃的な場合:曲げ力・引張力などの瞬間的抵抗度合い

B     一定の外力が長時間な場合:長期間的な変形の測定.この現象をクリープ creep と呼ぶ.

C     周期的に繰り返される場合:材料劣化破壊に至るまでの現象を疲れ fatigue と呼ぶ.

 

1.基本的な性質

1-1 弾性 elasticity

外力による変形が完全に元に戻る変形を弾性変形と呼び、その応力限界を弾性限界と呼ぶ.

プラスチック材料は一般に弾性と共に粘性を兼ね合わせもつ粘弾性体なので、厳格な意味での

弾性は示さないが、変形量の小さい間は、近似的な疑似弾性を示す.

 

1-2 塑性 plasticity

そ性は弾性の逆の性質.外力を取り除いても完全には元の状態に戻らない性質.

弾性限度を超えると塑性変形を起こし、ついには破壊に至る.

プラスチック材料の成形加工は、熱や圧力を加えて塑性変形を起こさせ所要の形状を得る操作.

 

1-3 粘性 viscosity 粘弾性

物質に外力(荷重)を加え流動を起こさせようとするとき、これに抵抗する度合い.

プラスチックのような高分子の場合は、粘性のほかに弾性も合わせもつ性質で粘弾性と呼ぶ.

粘弾性的性質は、クリープ現象や応力緩和現象として現れる.

この説明には、スプリングとダッシュポット(グリース入りのシリンダ)の組合せが利用される.

弾性はすぐに変形を起こすスプリングをもって表し、粘性はシリンダのじわじわしゅう動するピストン

の動きをもって表している.

粘性と塑性はよく似た性質であるが、どんな小さな応力によっても流動する性質を粘性と呼び、

ある“最低の応力(降伏応力)”が加えられて始めて流動を起こす性質を塑性と呼んでいる.

 

1-4 延性 ductility

材料に引張荷重をかけて塑性変形を与え、これを線状に引き延ばすことの出来る性質.

針金はこの性質を応用.一般に伸びの大きい材料ほど構成材料としては信頼度が高いとされる.

材料破壊は、ねばりのある破断状態を示す延性破壊と、もろくて真っ二つになる脆性破壊とがある.

 

1-5 靱性 toughness

じん性は、粘り強くて衝撃によく耐える性質.じん性が大きいと、弾性限度を超えても容易に破断

しない.俗に“腰の強い”材料をいう.

 

1-6 脆性 brittleness

ぜい性は、じん性の反対に衝撃に対して弱く、いわゆる“もろい”性質.

一般に材料は低温度ではもろくなり、低温ぜい性と呼び、破断するのをぜい性破壊と呼ぶ.

 

1-7 硬さ hardness

物体の一部に集中的な外力を加えた場合の変形に対する抵抗の度合.

 

1-8 剛性 (こわさ)

剛性の大きさは、縦弾性係数(ヤング率)もしくは横弾性係数の大きさが目安となる.

剛性は、ある物体に曲げ荷重が加えられたときの変形のしにくさを表す場合などに使われるが、

硬さや強さなどと混同されやすい.

 

1-9 強さ mechanical strength

機械的強さは、前述の諸性質を総合し概念的に表したもの.

プラスチックでは、短時間荷重より長期間的に示される強さがいっそう重要である.

 

2.機械的特性値の見方

プラスチック材料の特性は温度・湿度・光の照射などの周囲条件に著しい影響を受け、また外力の

かかり方や成形・加工方法の相違等で特性値にはかなりの開きがある.

よって、どの規格に基づいた試験値か、また、試験片と製品における特性値との相違に注意する.

および、通常は平均値表示であるが、最低値が示されることもあるので注意を要する.

 

3.引張特性

 

3-1 引張強さ 、 ひずみ(伸び)

σ : 引張応力 [MPa]

F  : 測定荷重 [N]

A  : 試験片の初めの断面積 [mm2]

 

ε : 引張ひずみ(伸び) [%]

L0  : 試験片の標線間距離 [mm]

ΔL0  : 試験片の標線間距離の増加 [mm]

 

 

3-2 引張弾性率

引張荷重に対する応力とひずみ(伸び)が、金属のように、荷重をかけた初めの段階で、比例関係

を保つ場合には、フックの法則が成り立ち、次式によって算出される.

 

E  : 引張弾性率 [MPa]

σ : 引張応力 [MPa]

ε : 引張ひずみ [%]

 

プラスチックの場合には、一般に比例関係を保たないので、JISでは次の方法が規定されている.

既存の JIS K 7113 に対し、ISO 527-1 をそのまま翻訳した JIS K 7161-1994 が制定されている.

 

 

JIS K 7161-1994 ISO整合)    割線引張弾性率による計算で、接線弾性率の JIS K 7113 より明確である.

引張応力−ひずみ曲線上にある2点の

規定されたひずみの値をもとに、

E t  : 引張弾性率 [MPa]

σ1 : ひずみε1 = 0.05 [%]

引張応力 [MPa]

σ2 : ひずみε2 = 0.25 [%]

引張応力 [MPa]

 

左図の2点(σ1 , σ2 )と(ε1 , ε2 )は、

d曲線だけに(ε1 = 0.05% , ε2 = 0.25%

と示されている.

曲線bでは、降伏応力(σy )は破壊応力

(σB )より小さいので、破壊強さ(σB )が

この材料の引張強さとなる.(σB = σM

曲線cでは、降伏応力(σy )が最大応力

であるので、引張強さはσy となる.

 

以上のようにして求めた引張弾性率は、

ヤング率または縦弾性率と呼ばれるが、

単に弾性率もしくはモジュラスと呼ばれて

いる.

 

 

引張荷重に対する引張弾性率のほかに、圧縮荷重に対する圧縮弾性率、曲げ荷重に対する曲げ

弾性率などがあるが、弾性率は物体の変形のしにくさ(いわゆる剛性)を表す尺度として重要で

ある.

 

弾性率には、このほかに、せん断荷重に対する弾性率として せん断弾性率もしくは剛性率(記号G

がある.せん断弾性率は横弾性率とも呼ばれる.

プラスチック材料に長時間継続して引張荷重をかけた場合には、クリープ変形が発生するので、

ひずみεのほかにクリープ変形を加算して弾性係数を算出しなければならない.

このようにして算出した弾性率は、“見かけの弾性率”とも呼ばれるものでプラスチック部品を実際に

使用する際の重要なデータである.


4.圧縮特性

試験方法は JIS K 7181-1994 及び JIS K 7208-1975 による.(20mm角を標準としている)

試料が破断するまでの最大応力(最大荷重 Pc )を、試験片の初期断面積(A)で割って求めたもの

を圧縮強さ [MPa] とする.

 

プラスチック材料の圧縮強さはその引張強さに比べると一般に著しく高い.

 

熱可塑性樹脂のうち、ポリエチレン・ポリプロピレン・耐衝撃性ABS樹脂などの弾性に富む材料

では、荷重をかけるとまずふくらみ、さらに圧縮を続けると扁平状に押しつぶされるだけで完全に

破断・破砕するには至らない.一般にそれほど重要視されていない.

一定量のひずみ(縮み)で測定 … 1%圧縮変形応力

 

しかし、熱硬化性樹脂などのように硬質で比較的もろい性質の材料では、圧縮により破砕するため

重視される.

 

 

 

5.せん断特性

プラスチック試験方法は JIS K 7214-1985 による.この試験方法では、厚さ 1.012.5mm50mm

角(丸)をポンチで打ち抜く.

プラスチック材料では、せん断特性はあまり重要視されないが、積層板・シート・フィルム類の打ち

抜き加工では直接問題となる特性である.

 

左図で、外力(せん断荷重 Ps )によって上部平面の

移動量(変形量、ずり)は、元の平面に対して

 

     εs : せん断ひずみ(ずり変形)

 

外力による変形量がその材料の弾性限度内である場合、

せん断ひずみεs とせん断応力σs との関係は

 

 

G [MPa] は、剛性率 rigidity または横弾性率、あるいは せん断弾性係数などと呼ばれる.

 

G  : 剛性率 [MPa]

σs : せん断応力 [MPa]

εs : せん断ひずみ [%]


6.曲げ特性

一般材料において、曲げ特性は引張特性・衝撃特性とともに特に重要な特性であり、ことに熱硬

化性樹脂の場合は曲げ特性と衝撃特性とをもってその機械的特性を代表させているといっても

よいくらいである.

試験方法は、曲げ強さ JIS K 7171-1994  、曲げ弾性率 JIS K 7203-1982

及び 熱硬化性プラスチック一般試験方法 JIS K 6911-1979 による.

矩形断面をもつ棒状試験片を一定の支点間隔(スパン)をもって支え、その中央に加圧くさびをあ

てて曲げ荷重を加え、破壊応力やたわみを測定する.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


6-1 曲げ強さ

 

σb 曲げ応力であるが、Fb が梁の破壊時の荷重であるときは曲げ破壊とよび、

試験中の最大荷重であるときは曲げ強さとする.

 

 

6-2 曲げ弾性率

 

JIS K 7203-1982   接線弾性率による計算

 

 

Eb  : 曲げ弾性率

F  : 荷重・たわみ曲線の初めの直線部分の任意に選らんだ点の荷重 [N]

Y  : 荷重Fにおける たわみ [mm]

 


JIS K 7171-1994 ISO整合)    割線引張弾性率による計算

前式Yに相当の たわみ量 s1 , s2 は、

εf 1 = 0.0005

εf 2 = 0.0025

無次元または[%]

 

L : 支点間距離 [mm]

h : 厚さ [mm]

 

 

 

曲げ弾性率 E f  は、

 

 

σf 1 : たわみ量s1 で測定

 した曲げ応力[MPa]

σf 2 : たわみ量s2 で測定

 した曲げ応力[MPa]

 

 

 

 

 

曲げ応力σb の大きさは、梁の厚さhの2乗に反比例する

たわみYは、梁の厚さhの3乗に反比例する

                従って、応力が作用する方向の厚みh は重要な要素となる.

 


7.硬さ

硬さは、材料(樹脂の種類・成分など)や加工条件の相違による機械的特性(この場合は変形へ

の抵抗)の相違の比較として利用されている.

プラスチックのような粘弾性物質では、特殊な場合を除いては、一般に、特に重要な特性としては

扱われない.

 

 

7-1 ブリネル硬さ Brinell hardness 略号HB

JIS 旧規格には存在したが、現在は使われていない.

試験片20mm角に、φ10mmの鋼球(押し込み用圧子)を静かに加圧し500kg 30秒保ってから

取り除き、試験片にできた永久くぼみの直径を測定し、所定の計算式から値を求める.

 

 

7-2 ロックウェル硬さ Rockwell hardness 略号HR

樹脂の硬さの測定に広く使用されている.試験方法はJIS K 7202-1982

scale

ロックウェル硬さの記号

圧子

基準荷重

[N]

試験荷重

[N]

硬さ算出式

R

HR R

φ12.700mmの鋼球

98.07 (10kgf)

588.4 (60kgf)

130500h

h [mm]

L

HR L

φ 6.350mmの鋼球

M

HR M

980.7 (100kgf)

 

基準荷重を試験片に加えて深さh 0 の凹みを作り、次に試験荷重を所定時間加え、再び元の基準

荷重に戻したときの凹み深さと、最初のh 0 との差h [mm] から上表に示す簡単な算式により硬さ

の値が得られる.試験器には目盛りが直読できるようになっており短時間に測定できる.

 

 

7-3 デュロメータ硬さ Durometer hardness

ASTM , JIS K 7215-1986 誤差大

針入度硬さ試験方法の一種で、押し込み用圧子には硬質の針状圧子が使用される.

針状圧子をバネの力で材料面に食い込ませ、その分量を圧子に直結した目盛り板で読み取る.

 

 

7-4 バーコル硬さ Barcol hardness tester を使用

原理はデュロメータ硬さとよく似ている.小形で取扱いが簡便なのが特徴.

3種類あり G/ZJ 934-1形は ASDM D 2583-67 に指定されている.

熱硬化性樹脂成形品の熱時における表面硬さを測定してその硬化度の判定の尺度とするのに利用

され、成形材料の硬化の遅速や成形条件の適否の判断などの資料として役立たせることができる.

 


8.衝撃特性

プラスチック材料の機械的性質を代表するものとして最も重要視されている.引張衝撃もあるが、

曲げ衝撃特性が一般的に使われる.

衝撃強さは、引張・圧縮・せん断強さなどと異なり、試験片の破壊時の応力をもって表さないで、試験

片の単位断面積あたりに吸収された破断エネルギーをもって表している.このため、JISでは、衝撃

強さの測定値は、衝撃強さという用語を用いず、衝撃値と呼んで、破壊応力と区別している.

 

8-1 アイゾット衝撃試験 Izod

試験方法はJIS K 7110 . 広く使用される.

 

V字形ノッチ溝を有する角形棒状試験片を

試験機に取り付け、ノッチと同じ側からハンマ

によって打撃して破断させる.

 

ハンマの持ち上げ角度と、破断した後の振上

がり角度とから、規定の方法によって、吸収エ

ネルギーを求め、次式によりアイゾット衝撃値

αk I を算出する.

左図寸法より

b : 試験片・切欠き幅 [mm]

t : 試験片・厚さ [mm]

d : 試験片・切欠き深さ [mm]

 

E : 吸収エネルギー [J]

 

上式は、SI単位 [kJ/m2 ] JIS K 7110-1984

で試験片の断面積で除した値であるが、

試験片・切欠き幅で除した値も混在している.

JIS K 7110-1977

 

従来単位との換算

1 [kJ/m2 ] = 1.0197 [kgfcm/c m2 ]

1 [kgfcm/c m2 ]

1 [J/m]  = 0.10197 [kgfcm/c m]

1 [kgfcm/c m]

 

8-2 シャルピー衝撃試験 Charpy

試験方法は、JIS K 7111-1984

熱硬化性プラスチックの衝撃試験以外には

あまり使用されていない.

 

V字形あるいはU字形ノッチ溝を有する角形棒

状試験片(A,B,C切欠き)の両端を固定して

試験機に取り付け、ノッチの裏面をハンマに

よって打撃して破断させる.

 

ハンマの振り始めの角度と、破断した後の振

終わり角度とから、規定の方法によって、吸収

エネルギーを求め、次式によりシャルピー衝撃

値αk c を算出する.

左図寸法より

b : 試験片・切欠き幅 [mm]

t : 試験片・厚さ [mm]

d : 試験片・切欠き深さ [mm]

 

E : 吸収エネルギー [J]

 

上式は、SI単位 [kJ/m2 ] JIS K 7111-1984

で試験片の断面積で除した値である.

従来単位では

ノッチを角形断面の短辺側に設けるエッジワイ

ズ衝撃試験片が一般に使われるが、長辺側

に設けるフラットワイズ衝撃試験片もある.

 

8-3 ディンスタット衝撃試験 Dynstat

原理的にはアイゾット衝撃試験方法と同じだが、試験片が小さいため、成形品から直接切り取るこ

とが可能.そのため一つの成形品の各部分の衝撃強さを知ることが出来るのが特徴.

 

8-4 落錘衝撃試験 drop-ball test

試験方法は、JIS K 7211-1976. 平板状の試験片が使用され、一定の高さから鋼製重錘(鋼球)を

落下させ、試料の損傷状態を目視で判定する.安全帽の衝撃試験等に応用される.

9.クリープ特性

一定の荷重のもとで、材料の変形が時間の経過とともに増加していく現象を creep と呼んでいる.

プラスチック材料のもつ粘弾性的性質によるものが原因で、各種のクリープ特性表がある.

1.       曲げクリープ特性:たわみ量・荷重時間の関係、温度と湿度を一定とする

2.       曲げクリープ特性:たわみ量・荷重時間の関係、単一製品について温度を変える

3.       引張クリープ特性:ひずみ量・荷重時間の関係、温度と湿度を一定とする

4.       引張クリープ特性:ひずみ率・荷重時間の関係、温度と引張応力を一定とする

5.       圧縮クリープ特性:荷重時間・変形量の関係、圧縮速度一定 (ex.5mm/min) とする

 

プラスチック材料に長時間荷重がかけられていると、クリープ現象によって、変形が徐々に進行する

だけでなく、普通の短時間試験で得られる破壊強さよりもはるかに小さな応力によって材料が破壊し

てしまうことがある.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


例えば、上図の矩形断面の試験片(はり)において、そのたわみ(変形量)Y は、

Y  : たわみ [mm]

F  : 曲げ荷重 [N]

L  : 支点間距離 [mm]

Eb  : 曲げ弾性率 [MPa]

I  : 断面2次慣性モーメント(図のはりの場合、I = bh3/12

 

曲げ荷重が長時間かかる部品の場合、上式の曲げ弾性率Eb には、はりの設計時に想定されるある

長時間後の値を取り入れなければならない.この値は、実際に多くの実験をやって求める.

 

 

 

 

 

 

プラスチックの化学的性質

耐薬品性(耐食性)、吸水性(吸湿性)、透湿性および気体透過性などが対象になる.

 

1.耐薬品性

金属材料は電導性であり、金属イオンの溶出により腐食現象が説明されるが、プラスチックは電気

の不良導体であり、イオンの溶出は普段はない.その化学的劣化の基本となるのは、腐食流体の材

料本体中への浸透・拡散である.強い酸化剤のもとでは、分子構造の破壊が起こり、機械的性質の

劣化を生じ、溶剤の場合はポリマー構造内部に溶剤分子を吸収して膨潤が起こる.

また応力負荷状況では、応力と流体との共同作用で特異な現象を示すことが多い.

 

1-1    試験方法

プラスチックの耐薬品性試験方法は JIS K 7114-1980 による.

温度23℃の試験液に試料を一定期間浸漬した後、試験片の重量・寸法および外観の変化を測定

し、プラスチックの耐薬品性を評価する.これは静的浸漬試験であるが、この他、実際の使用状態

でのデータに出来るだけ近づけるため、応力負荷状態での浸漬試験、流動液による浸漬試験、温

度勾配下での浸漬試験などの動的浸漬試験がある.

 

1-2    概要

一般にプラスチックの耐薬品性の対象となるのは、有機溶剤の影響(耐溶剤性、耐油性)、酸・アル

カリの影響などであって、後者はプラスチックの化学的安定度に関係する.

ポリマー中にエーテル・エステル・アミドなどの結合のあるものは、酸・アルカリによる加水分解を受

けやすく、セルロース系プラスチック・ポリエステル樹脂・ポリアミド(ナイロン)・ポリアクリル酸メチル

(メタクリル樹脂)などはその傾向が多い.また、ポリスチレンはベンゼン核があるため濃硫酸・濃硝

酸でスルホン化・ニトロ化と酸化の影響を受けて損傷されやすいなど、ポリマーの化学構造からある

程度類推できる.但し、プラスチックの耐薬品性はポリマーの化学構造のみでなく、重合度・結晶化

度・架橋密度の程度などで著しく影響されることに注意せねばならない.

 

1. フェノール樹脂

一般に熱硬化性プラスチックはそれが完全に硬化された状態では、三次元構造を持ち、加熱し

ても溶融せず、溶媒にも溶けない.

一般にアルカリには弱いが、硫酸・塩酸などの非酸化性酸に強く、また耐熱性がある.

 

2. 不飽和ポリエステル樹脂

 

強アルカリや高温の酸で分解を受けやすい.非酸化性酸・酸性塩・極性溶剤に耐える.

3. 塩化ビニル樹脂

 

酸・アルカリに対しては一般的に強い抵抗性がある.ニトロベンゼン・テトラヒドロフラン・シクロヘ

キサノン・二硫化酸素-アセトン混合溶剤に溶解する.

 

4. ポリスチレン

酸・アルカリに侵されにくいが、ベンゼン環がついたかさ高い構造であるので、すきまの多い構

造となり、溶剤に侵されやすい.ケトン・エステル・芳香族炭化水素・ハロゲン化炭素などに溶解

する.アルコールには侵されないがエーテルでは膨潤する.

 

5. オレフェン系樹脂

ポリエチレン・ポリプロピレンのいずれも、弱酸・弱アルカリに強く、常温では侵されないが、強酸

化性酸(濃硫酸・クロルスルホン酸・硝酸)で劣化する.

6070℃以下では溶剤にほとんど溶けないが、70℃以上では芳香族炭化水素・同塩素化物(キ

シレン・デカリン・α-クロルナフタレン)に溶解する.応力の存在下で環境応力亀裂を起こしやす

いので注意が必要である.

 

6. ポリアミド(ナイロン)

アルカリには抵抗性を示すが酸には分解を受けやすい.親水性のポリマーで吸水率が大きい.

ポリアミドの種類によっては、フェノール・氷酢酸・メタノール・クロロホルム・モノクロール酢酸・ジ

クロル酢酸などに溶解する.

 

7. フッ素樹脂

ポリ四フッ化エチレンは、酸・アルカリ・有機溶剤のいずれに対しても耐薬品性が極めて良い.

ポリ三フッ化エチレンは Cl の存在のためいくらか耐薬品性がわるくなり、エチルエーテル・トリク

ロロエチレン・トルエン・酢酸エチルなどにわずかに膨潤する.フッ化ビニリデン樹脂はフッ素樹

脂としての耐薬品性と、良好な熱加工性とをもっている.

 

1-3    応力負荷状態での耐薬品性

プラスチックを工業的ライニングに使用する場合などに動的試験が必要となる.

 

静的浸漬試験ではほとんど変化がないのに、応力がかかっている状態では膨潤して強さの低下を

起こしたり、あるいは薬液の侵入で分子切断が起こり、短時間に脆性破壊を起こしたりする.

 

環境応力亀裂はポリエチレンには古くから知られている現象であるが、その他の樹脂にも(例えばポ

カーボネート)ある程度認められるものである.この現象は成形加工時に受けた応力が内部に残留

する場合などに薬液に触れたり、浸漬した際にその促進作用により亀裂(クラック)が発生する現象

であって、表面に発生する脆性破壊の現象である.ポリエチレンの環境応力亀裂についてはメルトフ

ローレート(MFR : JIS 7210-1976 ) が大きい影響を及ぼすことが明らかにされている.

 

応力負荷状態での耐薬品性試験方法では、薬液浸漬状態でのクリープ試験・応力緩和試験・疲れ

試験・短時間引張試験などがある.

 

JIS Z 1703-1978 ではストレスクラッキング試験方法を示す.

 

ポリプロピレンのクリープ特性にあたえる環境の影響

分類

A

B

C

D

環境

 

媒体

10

NaOH 40

50 H2SO4

イノゲン

イソプロ

パノール

濃硫酸

推定される主な作用の種類

ほとんど作用無し、あるいは溶解酸素

表面仕事の減少

膨潤

酸化

破壊

様式

延性

(脆性)

脆性

(延性)

脆性

脆性

亀裂の数

多←-------------------------------→少

試験片の外見的変化

全面白色化

白色化せず

亀裂部分が白色化

白色化せず

 

 

3.吸湿(吸水)性

プラスチック材料を長時間にわたって水中に浸漬しておくか、湿度の高い雰囲気内に放置しておくと

、その材料の種類により大小の相違はあるがいずれも水分(湿気)を吸収してその重量を増し、また

、一般にそのときの温度が高いほどこの傾向は促進される.このような性質を吸湿性または吸水性

とよび、一定時間後における試料の単位重量あたり、もしくは単位表面積あたりに増加した重量を

もって吸水率と定義して、mg / g または%、mg / cm3 などをもって表す.

 

JIS K 7209-1984 ( プラスチックの吸水率および沸騰水吸水率試験方法 )は規定温度の水中または

沸騰水中に一定時間浸漬して、プラスチックが吸収した水の重さを測定するための一般的操作につ

いて規定している.

 

プラスチック材料の吸湿(吸水)性と他の物性との関連は、

@             吸湿性の大きい材料は高湿時において絶縁抵抗その他の電気的性質が劣化する.

A             成形後に吸湿することにより製品寸法に経時的変化(膨張)をともなう.

B             樹脂の種類によっては、吸湿によってその機械的性質が変化する.

C             吸湿性の大きい材料は一般に耐薬品性の劣化が大きく、また耐候性が低下する.

 

ポリカーボネート成形材料の吸水率と衝撃値との関係

吸水率

[ % ]

成形品

分子量

成形品

外観

アイゾット衝撃値

[ ftlb / in ]

0.070

0.031

0.022

0.011

2.2×10^4

銀状発生

銀状発生

良好

良好

9.0

13.1

13.4

14.1